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特別講義 牟田陽日氏


今日の特別講義では
現代九谷焼において、とても注目されている九谷焼作家さんの
牟田陽日さんをお招きしました!

こちらが牟田陽日さんです!
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牟田さんは東京都ご出身で、ロンドンのゴールドスミスカレッジをご卒業後、
石川県九谷焼技術研修所を卒業され、現在は九谷焼の産地である石川県能美市を拠点に作家活動をされています。
こちらが牟田さんの作品です。

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九谷焼の鮮やかな色合いが素敵ですね!
ご本人も絵画的なやきものと仰っていましたが、
分厚いガラス質の鮮やかな上絵の具(釉薬)を使うのが九谷焼の特徴です。

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牟田さんはもともと絵が好きで、高校時代に美術予備校でデッサンの勉強をされていたそうなのですが
デッサンを学んで行く中で「自分は絵画をやりたいわけじゃない」ということに気づき始めます。

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そんな中、東京で「OUT OF ACTIONS」というロサンゼルスの美術館から巡回してきた展覧会を目にし、
50年代から80年代のアクションアートとの出会いが訪れます。

もともと現代アートに興味のあった牟田さんにとって、その展覧会はとても衝撃的なものだったそうです。

たくさんのアクションアートの作家や、
1960年代に活躍された日本のパフォーマンス集団「ハイレッドセンター」、
モノ派の作家を知る中で、
「私も現代アートをやってみたい!」と強く思うようになります。


こちらは牟田さんの予備校時代の作品。
プラスチックの容器に水を入れて虹を作り、それを映し出す作品にされていたそうです。

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こちらは牟田さんが一番始めに作られたインスタレーション作品です。
「光と私」という課題で作られたものだそうです。

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こちらは牟田さんの19才の時の作品。
水にご自分の顔を映し出した「水像」です。

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その後、牟田さんは現代美術をやりたい、という想いから
八王子にある東京造形大学の絵画コースに進みます。

こちらは牟田さんが学祭の時に発表した作品で「モニター」というタイトルの作品です。
女の人が暗い部屋の中、窓越しに料理をしている図像がぼけて見えるという作品です。

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この作品は「世界で一番安全な国である日本で暮らす中で感じている現実感のなさ」
をテーマに制作された作品です。

日本は世界で一番安全な国で、銃をもっている人もいなくて
生死の危険性を感じることなく生きている。

子供の頃から自分の周りに何か薄い膜のような存在があることを感じていた牟田さん。
「世界で戦争や災害が起こっていても自分には現実観がない」
という自分自身と世界を隔てる薄い膜のようなものを可視化した作品です。


こちらは牟田さんが大学1年生の時に作られた「モニターボックス」という作品です。

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ボックスの中には壁をくり抜いた「モニター」があり、
「中から見えている景色は現実の景色なのに、環境を変えることによって現実でないものに見える」こと
を表現した作品です。

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大学で現代アート作品を作っていた牟田さんでしたが、
「現代アートが生まれた西洋にいけばもっと現代アートのことが分かるかもしれない」
と思い、留学を決意します。

こちらは牟田さんがロンドンで住んでいた街。

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移民が多い場所で、あまり治安がいい場所ではなかったそう。
日本とは違う文化に触れ、ショックを受けつつも
住んでいる人々の「人間としての強さ」を目の当たりにします。

こちらは牟田さんが通っていたゴールドスミスカレッジのヴィジュアルアート科の建物です。

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ロンドンの生活で牟田さんがショックを受けたのは「食べ物のまずさ」だったそう。
このミートパイ、写真では美味しそうに見えますが
実際は「どうしようもない位まずいもの」だったそう!

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ロンドンの食べ物とパイとの出会いから
「身近な環境」と「自分」のギャップをどう埋めて行くかを考えた牟田さんは
「ベルトコンベアーとマッドパイ」という作品を作ります。

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ベルトコンベアーに乗った土製のパイは床に落ちて粉々に、、、

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イギリスの学校の授業では、自分自身の言葉で作品について説明し
周りの人からの様々な批評を受けるという、
ディスカッション形式で授業が進んで行くそうです。


作品を制作していくうちに、牟田さんの興味は徐々に変化していきます。
自然に対しての興味から生まれたのが、この「mountain」という映像作品です。

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始めはアップで撮られた山々の映像から始まりますが、
最後にはその山を、牟田さんが食べてしまう!!という作品です。


こちらも自然をテーマに作った作品。
山がブーイングしている作品です。

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このような作品を作りつづけて行く中、牟田さんはあるフラストレーションを感じ始めます。

作品を作り終わった後、大量のゴミが出てしまうこと。
いくら作品を作っても最終的にはなくなってしまうこと。

そうしたことから離れられるのでは?という想いから
牟田さんは「焼き物」に可能性を感じ始めます。

ある時、何度か石川県に遊びに行くうちに出会った九谷焼に衝撃を受けます。
また美しいだけではない、ドロドロとした強い存在感のある古小九谷焼きを見て
「九谷焼を勉強したい!」という思いは強くなっていったそうです。

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こちらはイギリスのビクトリア時代の緑色のタイル。
見たときに「なんだか九谷焼の色合いに似ているな」と思ったそう。

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こちらは牟田さんが九谷焼を学ばれた石川県九谷焼技術研究所です。

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他の伝統工芸と比べても寛容な気質を持っている九谷焼の自由さは
牟田さんにとって、とても魅力的に映ります。

こちらは九谷焼研修所の課題作品です。
九谷焼と一言でいっても、いろいろな表現の仕方があるそうです。

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牟田さんが九谷焼の作り方を分かりやすく説明してくださいました。
こちらはあらかじめ本焼きをした磁器です。

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そこに二酸化マンガンベースの無鉛呉須をといて、、

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絵付けをします。

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その上に釉薬を作って

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呉須で描いた線の上に、筆でのせていきます。

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850度から880度で焼成すると、このように鮮やかに発色します。

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こちらは牟田さんの卒業制作です。
鋳込みで作った作品に絵付けをしたのだそう。

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これらの作品は卒業後1年目頃の作品で、
点画的な書き方にチャレンジしたり、色合いをカラフルにしたりと、
絵の具と素材をどういう風に使って行けるかの実験をしながら
自分なりの表現方法を試していたそうです。

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九谷焼研修所を卒業後、
東京に帰って工芸品を売る仕事をしながら展覧会をしたり、作品を販売していくなか
制作依頼も増え、どんどん忙しくなってきたので
再び石川県に戻ってこられたそうです。

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そんな中、陶芸界の中では一番難しいと言われている茶碗作りを始めます。
牟田さんの茶碗はもちろん使うことも出来ますが、
茶碗道の中ではどちらかと言うと美術作品に近い存在としての茶碗なのだそうです。

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これを作ったときに
「器の中にも空間があって器の外にも空間があって、映像的に絵を描くことができるのではないか」
と考えて器制作を始めたのだそうです。



九谷焼では獅子や龍や麒麟などの神獣を描くことが多いそうなのですが
牟田さんもそれらの神獣をモチーフとして作品の中に描いています。

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器とモチーフとの調和を大切にし、ゆるやかに空間に存在することを
大事に制作されているそうです。

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九谷焼の緑(青)は一番特徴的な色なのだそう。
こちらは現代的な九谷焼きとは何かを考えながら制作された作品です。

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この辺りの作品は、現在開催中の展覧会に出品されているそうで、
富山県にある佐藤記念美術館で行われている特別展
「伝統と創造ー現代九谷焼の騎手たち」にて見る事ができるそうです。

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立体作品の獅子です。
元々、九谷焼では美術品の焼き物も多いのですが、
こちらは牟田さんが阿吽の獅子として制作されたものです。

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こちらは牟田さんが、昨年パラミタ陶芸大賞に選ばれた際の展示の様子です。

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こちらが牟田さんの工房です。
上絵棚に一色ずつ上絵の具が入っています。

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昨年お子さんが生まれたそうで、育児と制作の両立が大変なのだそう。
ですが、旦那様の細やかなサポートもあり、お二人で一緒にやっていらっしゃるのだそう。
素敵ですね〜
お子さんの蕗ちゃんとのツーショットです。

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あまり作風や技法を限定するのではなく、
その時思いついた技法で、使いたいものがあったらどんどん使っていくようにしているとのこと。

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「自然と人間性との関係性」ということをテーマに、作品を制作されているそうです。
こちらは今年の6月に発表された新作。

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鯨が描かれているのですが、鯨と空間を表現したもので
器の形を大胆に崩し、絵を外側ではなく内側に描き、
器なのか?絵画なのか?ということを考えて作られた作品だそう。


こちらの亀の甲羅に付いたお面は外れるようになっている蓋物の作品で
佐藤記念美術館で見ることが出来るのだそう。

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さてここからは牟田さんへの質問コーナーです!
たくさんの質問に、とても丁寧に応えてくださいました。

「映像で食べていた山は食べれるのですか?」
「筆の種類はどんなものを使っていますか?」
「上絵の具をきれいに発色させるには?」
などなど色々な質問にお答え頂きました。

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牟田さんにとっての陶芸の魅力は触れること。
オブジェも器も両方作りたいと思っていらっしゃるそうで
その両方の間のよくわからないところが好きで、
形の伸びやかさを大事に、触った時に気持ちのよい形を大事にしているとのことでした。
描く絵柄をもともと決めている場合でも、
絵が固まらないように躍動感や動いている感じを大事にしているそうです。

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イギリスでは皆好き勝手やっていて、むしろ人から言われたことはやらないところもあるので
「日本では言われたことに、考えないで素直にやってしまうことに日本人は慣れているのかな?」
と言われていたことも印象的でした。

また「絵を描く事はもとからやっていた事だったのか、あるいは九谷焼を始めてから描く事を始めたのか?」
という質問に対し、非常に興味深いお答えを頂きました。

絵画を勉強していた時は自分には絵画は向いていないと思って、
全ての絵を捨て、見切りをつけたそうなのですが
九谷焼と出逢って「これは自分にすごくはまっている!」と思ったそうです。
造形と絵が一緒になっていることや、
技法の制約によって絵や道具が限定されることで生まれるリミットが自分に合っていた。
物質が持っている性質に、ぴたっと合っていたとのお答えがとても印象的でした。


常に真摯にご自分の興味や疑問に向き合って、自分自身に正直に生きていらっしゃる様子は
とても魅力的で、きっと学生の皆の励みになったはず!

牟田さんが持って来て見せてくださった作品に、学生の皆も釘付けでした。
講義が終わったあとも、たくさんの学生が牟田さんとお話したくて待っていました。

牟田さん、すばらしい講義を本当にありがとうございました!

(I)



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